部屋の中にはやはり亜紀、牧原、篠田、坂本の4人がいた。
涼しげな白のワンピースを着ている亜紀がソファの真ん中に座っていて、その周りに3人が座っている。
そしてなぜか篠田だけが上半身裸の姿。(さっき言ってた通り、暑くて脱いだのだろう)
亜紀はその横で少し恥ずかしげに笑顔を見せていた。
ケータリングサービスで呼ぶと言っていた料理人の姿は見えないから、もう帰ったみたいだ。
もう食事は殆ど終わったのだろう、前に置いてある低いテーブルの上にはデザートの皿が数枚とワインやシャンパンのビンとグラスが置いてあった。
どうやら4人はすでにアルコールをかなり摂取しているらしい。
何本か置いてある酒のビンは、その殆どが空になっているように見えた。
亜紀も結構飲んだのだろう、頬がほんのりピンク色に染まっている。
「亜紀ちゃん料理どうだった?気に入ってくれた?」
「もう本当に美味しかったです!お酒もお料理も。」
「亜紀ちゃん結構飲んでるよね、酒強いの?」
「うーん、そんな事ないんですけど、今日はどれも美味しくて、飲めちゃいますね。」
「そっか、じゃあ遠慮せずにもっと飲んでいいよ。まだ酒なら沢山あるし。」
「でもなんか、こんな贅沢していいのかなぁって思っちゃいます。このコテージも凄く素敵だし。私なんかがここでこんな贅沢してたらバチが当たりそうで。」
「ハハッそんなの気にしなくていいのに。折角ここまで来たんだから楽しまなきゃ。ほら飲んで飲んで。」
亜紀の隣に座っていた牧原は、そう言ってグラスにたっぷりと白ワインを注いで亜紀に渡した。
「あ、ありがとうございます。」
それを亜紀は嬉しそうに口に含む。
「わぁ、これも美味しいなぁ。気をつけないと飲み過ぎちゃいそう。」
「良いんだよ、今夜はとことん酔っぱらっても、亜紀ちゃんは俺達が介抱してあげるからさ。」
「いえそんな、ここまでしてもらってるのに、その上ご迷惑なんて掛けられないです。」
表情を見れば、今の亜紀がかなり上機嫌である事はすぐに分かった。
贅沢三昧の時間を満喫して、それに酔いしれているような。別の言い方をすれば浮かれているような表情をしている。
アルコールが入っているのもあるのだろうが、こんなに無防備になっている亜紀は久しぶりに見た気がする。
「ふぅ、なんだか身体が熱くなってきちゃった、やっぱり飲み過ぎかな。今までこんなに飲んだことないし……もうそろそろ止めとかないと。」
アルコールで体温が上がっているのだろう、亜紀はそう言いながら手をパタパタと動かして顔を扇いだ。
するとそれを見て、上半身裸の篠田が再び亜紀にこう言った。
「亜紀ちゃんは本当に脱がなくていいの?暑かったら脱いじゃいなよ。」
亜紀が人前で下着姿になる訳がないだろ。さっきからなに言ってるんだ、この篠田とか言う奴。
俺は亜紀にセクハラっぽい事ばかり言っている篠田を窓の外から睨んだ。
「い、いいです。私はこのままで。このワンピース、十分薄着ですし。」
「そう?じゃあ亜紀ちゃんが脱がないなら俺がもっと脱いじゃおうかなぁ。」
篠田はそう言うと、今度は下のハーフパンツまで脱ぎ始めた。
「キャッ!もう篠田さんちょっとぉ……」
パンツ1枚だけの姿になった篠田を見て、咄嗟に手で目を覆う亜紀。
「ハハッ、篠田は露出狂だからなぁ。すぐ脱ぐ癖があるんだよ。」
「おい篠田、お前なんだよそのパンツ、どういう趣味してんだよ。ハハハッ!AV男優みたいじゃん。」
そう言って恥ずかしがっている亜紀の横でガハハッ!と笑う牧原と坂本。
俺も篠田のパンツ姿を見て驚いた。
なんて卑猥なパンツ穿いてるんだよ。
篠田が穿いていたのは男性用ビキニタイプのパンツだった。
色は黒で、生地が小さいから股間の膨らみがやたらと強調されている。
俺だって、あんなの穿いてる奴AVでしか見た事がない。
「ほら亜紀ちゃん、ちゃんと見てやってよ。亜紀ちゃんに見られると篠田喜ぶからさ。」
「えっ?えっ?私はいいですいいですっ。」
「いいからいいから。」
恥ずかしがる亜紀の手を掴んで、無理やり顔を篠田の方に向かせようとする牧原と坂本。
「ほらあきちゃん!ちゃんと目開いて。」
「え~もぉ恥ずかしいですぅ……」
と言いながらも、顔を前に向かされた亜紀の目は篠田の身体をしっかり見ていた。
「どう?亜紀ちゃん、篠田の鍛え上げられた肉体とあのパンツのセンスは。」
「亜紀ちゃん感想聞かせてよ。」
「え~……なんか……イヤらしいです……」
恥ずかしそうに小さな声でそう言った亜紀。
でも目線は篠田の方から離れてない。
「亜紀ちゃんって昨日筋肉フェチとか言ってなかったっけ?」
「別にそういう訳じゃ……」
「でも嫌いじゃないでしょ?そういう男の筋肉とか。」
「おい篠田、ちょっと亜紀ちゃんに腹筋触らせてあげろよ。」
「いいよぉ!亜紀ちゃんなら俺の身体のどこ触ってもらってもOKだよ!」
そう言ってニヤニヤ笑みを浮かべた篠田が亜紀の目の前まで近づく。
「え~いいですよそんな……わっわっ、近い近い。」
「ほら亜紀ちゃん、遠慮しないで触ってみなよ。手伸ばしてさ。」
牧原と坂本がまた無理やり亜紀の手を掴んで篠田の腹筋を触らせる。
「どう亜紀ちゃん?」
掴んだ亜紀の手をなでなでさせるように動かす牧原。
「え~……わぁ、硬い……」
亜紀はさっきまであれだけ拒否反応を見せて恥ずかしがっていたのに、なぜか篠田の腹筋を触ってからは嬉しそうにしていた。
手も牧原達に無理やり触らされていたのは最初だけで、後は自分から動かしてその感触を確かめているように触っていた。
「なんかボコボコしてる……凄いですね……」
「いやぁ亜紀ちゃんに褒められると嬉しいなぁ。」
「毎日トレーニングしてるんですか?」
「まぁね。」
興味深そうに質問する亜紀。
するとそんな亜紀を上から見下ろしていた、篠田がまた突然とんでもない事を言い出した。
「あれっ!?ちょっと亜紀ちゃん!なんで俺の股間凝視してんの!?うわぁセクハラだよこれ!」
と、オーバーリアクションでそう言い出した篠田。わざとらしい。
亜紀は驚いて顔を赤くしながらすぐにそれを否定する。
「えっ!?見てないですよぉ!そんな場所見てないです見てないです!」
亜紀はそう言って慌てて手を引っ込めて篠田から距離をとった。
そして案の定、牧原と坂本がそれを茶化す。
「ハハッなんだよ亜紀ちゃん。大人しそうな顔してるのに意外と男のチンポ好きなんだね?」
「もぉ~そんなんじゃないですよぉ、見てないですし。もぉ、篠田さんってやっぱりイヤらしいです。」
俺は下ネタで牧原達にからかわれる亜紀をじっと外から眺めていた。
俺は正直、今まで亜紀とそういう会話をあまりした事がなかったし、亜紀が誰かとそういう卑猥な話をしている所も見たこともなかった。
だから俺は余計に、そんな亜紀から目が離せなくなっていったんだ。